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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)643号 判決

被告人

石田正倉

主文

原判決を破毀する

被告人を懲役四月に処する

原審に於ける未決勾留日数中参拾日を右本刑に算入する

但し本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予する

理由

弁護人田村提出の控訴趣意書の論旨は

原判決はその刑の量定著しく不当にして過重に過くるものと信する。

即ち

一、被害者か他人と喧嘩して居るのを他の観客の迷惑になるのを慮り、被告が之を制止したる処被害者は之を聞かず被告と被害者との喧嘩となつた。

二、被害者が天正組の大橋某の弟分であり立派なチンピラなること

三、被告も亦被害者に撲られて居ること

四、改悛の情顯著なること

五、被害の程度頗る軽微なること

六、被告に前科なきこと

即ち被告人に対しては軽き罰金刑を以て処断することか適当なりと認める

と謂ふにある。

依つて記録に基き審按するに原審第一回公判調書中被告人の供述記載、原審証人坂卷重治の供述記載を綜合考察すると昭和二十四年二月一日被告人が松阪市本町劇場松阪座で観劇中被害者と他の見物人との間に於て喧嘩口論が生したので被告人は之を制止せんとしたか被害者が之を肯かなかつたので被告人は憤激の余同人の顏面を殴打したのであるが被害の程度も極めて軽微であつたことが認められる。即ち斯る程度の犯行を爲した被告人に対し原審か懲役四月の実刑を科したのは其量刑不当に重いものと謂ふべく、從つて本件控訴は理由があるから刑事訴訟法第三百九十七條に則り原判決を破毀する。

法律に照すと被告人の判示所爲は刑法第二百八條に該当するから所定刑中懲役刑を選択し其刑期範囲内で被告人を懲役四月に処し同法第二十一條に依り原審に於ける未決勾留日数中、三十日を右本刑に算入するが情状刑の執行を猶予するを相当と認めるから同法第二十五條に則り本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

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